1枚ボード — このニュースの核心
出典:[4] DeepSeek公式モデルカード:V4.1 Flash / [5] DeepSeek公式図:Global KV Cache Per Token / [3] DeepSeek API:Models & Pricing / [2] DeepSeek API:提供モデルとPro継続案内
THE RELEASE & THE REVERSAL
9/10の発表と、Pro継続の追記を分ける
ニュースの中心はV4.1 Flashの正式公開だ。ただし「9/14からProもFlashになる」という移行案内は、その後の公式文書で変更されている。発表の履歴と、今使うべき運用情報を分けて読む。
新しいFlashが公開。Proの切替も予告
発表ページは、9/14 04:00 UTC(日本時間13:00)からProへのリクエストをFlashへ転送する計画を記載。新料金の適用は9/10 04:00 UTC(日本時間13:00)と案内している。
現行API文書では「Proを継続」に変更
ユーザーの要望に応じ、9/14以降もV4 ProのAPI提供を継続し、課金方式も維持するという案内を確認。掲載時刻は確定できないため、本号では確認日で示す。
| 指定する model | 扱い |
|---|---|
deepseek-flash | V4.1 Flashを呼ぶ現行の名前。 |
deepseek-v4-flashdeepseek-v4-flash-vision-exp | 旧モデル自体は終了。互換性のため、名前を一時的にV4.1 Flashへ転送。 |
deepseek-v4-pro | V4 Proを継続。9/14の自動切替を現行の確定予定として扱わない。 |
料金の適用時刻は発表記事の公開時刻ではない。また、互換名が残ることは旧モデルの出力を再現できることを意味しない。
出典:[1] DeepSeek:V4.1 Flash 発表(9/10) / [2] DeepSeek API:提供モデルとPro継続案内 / [3] DeepSeek API:Models & Pricing
A DIFFERENT GENERATION
読むとき8B、書くとき16B。計算を使い分ける
8/1号で扱ったV4-Flashの続きではあるが、今回は新しいCausal Encoder–Decoder(CED)構造を採用した別世代。単なる名称変更や値下げではない。読む段階と書く段階で、使う計算を非対称にした点が核になる。
入力を読む
Prefill
トークン当たりの
有効パラメータ
出力を生成する
Decode
生成時は、より多くの
計算を使う
図は処理段階の概念図。8B/16Bは有効パラメータ数であり、必要メモリ量やGPU台数ではない。
| モデル | バックボーン総数 | 有効数 |
|---|---|---|
| V4 Flash | 284B | 13B |
| V4 Pro | 1.6T | 49B |
| V4.1 Flash | 552B | 8B / 16B |
V4.1 Flashは画像を理解する機能も統合した。1Mトークンのコンテキストを持ち、コードだけでなく、画面や図を含む作業への応用も考えられる。ただし、入力が長いことと、必要な事実を確実に取り出せることは別の評価項目だ。
もう一段詳しく:552Bに何が含まれるか
モデルカードは552Bをバックボーンとして説明し、別に196BのEngram条件付きメモリを記載している。視覚エンコーダなども含め、公開モデル全体の保存・推論構成を「552Bだけ」「8Bモデル相当」と単純化しない。CEDは20層の因果的エンコーダと20層のデコーダから構成される。
出典:[4] DeepSeek公式モデルカード:V4.1 Flash / [1] DeepSeek:V4.1 Flash 発表(9/10) / [7] DeepSeek API:Change Log
THE CACHE IS THE LEVER
KVを小さくする。長い履歴の経済性が変わる
KVキャッシュは、過去のトークンを参照するときに使う計算済みの中間情報。長い履歴を何度も扱うと、その保存と再利用が推論基盤の負担になる。V4.1は「キャッシュを使う」だけでなく、キャッシュ自体を小さくする設計だ。
V1の389,120 B/tokenとの比較約1/437 V1比
公式図のGlobal KV指標を同じ尺度で再表示。小数は本号の計算。GPUメモリ全体・モデル重み・全キャッシュの合計ではない。
計算結果を、層をまたいで共有する
CEDとCSAの設計で、各層が個別に保持していた情報の重複を減らす。モデルカードは主KVや索引用情報の共有を説明している。
KVを低精度化して、保存量を減らす
主KVのFP4量子化などにより、Global KVを890 B/tokenへ圧縮。数値表現を軽くし、メモリ負担を抑える。
すべてをSSDへ保存せず、必要部分を再計算する
Bounded Replayで直近の局所的な注意情報を復元し、SWAのKVをSSDへ永続化しない設計。公式発表は旧世代比でHBM約1/4、SSD約1/8と説明する。
混同しない:推論基盤の「KVメモリ削減」と、API明細の「キャッシュヒット割引」は関連するが、別の指標。メモリが1/4だから、自分の総請求も1/4になるわけではない。
出典:[4] DeepSeek公式モデルカード:V4.1 Flash / [5] DeepSeek公式図:Global KV Cache Per Token / [1] DeepSeek:V4.1 Flash 発表(9/10)
READ THE BENCHMARKS CAREFULLY
エージェントでは強い。しかし「全面的なPro超え」ではない
発表はProを上回る性能を強調する。比較表では、特にコード修正や端末操作を伴うエージェント評価で改善している。一方、知識・推論のすべての指標で勝つわけではない。
| 評価 | V4 Flash | V4 Pro | V4.1 Flash | Proとの差 |
|---|---|---|---|---|
| Terminal-Bench 2.1 | 82.7% | 87.9% | 90.6% | +2.7 pt |
| DeepSWE v1.1 | 54.4% | 62.7% | 74.2% | +11.5 pt |
| GPQA Diamond | 89.9% | 92.4% | 90.9% | −1.5 pt |
Terminal-Benchは端末上のタスク、DeepSWEはソフトウェア修正、GPQAは高度な知識・推論を測る。表は各評価内で読むもので、異なる評価の点数を直接平均して「総合性能」にしない。
結果はモデル単体ではなく、実行条件も含む
モデルカードの評価は最大の推論努力量を使い、エージェントの実行枠組み(ハーネス)やコンテキスト条件を指定している。DeepSWEの74.2はmini-SWE系の条件。別のツールや推論設定で、そのまま再現する保証ではない。
公開重みの数値設定 reasoning_effort=100 と、ホストAPIの low / high / max は異なる表現。APIに数値100をそのまま入れる前提では実装しない。
「速い」の測り方も必要だ。文章が流れる速度だけでなく、最初の応答まで、ツール待ち、リトライ、最後のテスト完了までを測る。本号では比較条件の揃った独立の速度実測値は掲載しない。
出典:[4] DeepSeek公式モデルカード:V4.1 Flash / [7] DeepSeek API:Change Log / [9] DeepSeek API:Thinking Mode
THE ACTUAL PRICE TAG
キャッシュ入力は、同じ時間帯のProより約86%安い
同じ時間帯・同じ種類のトークンで比べると、Flashはヒット入力が約86%、ミス入力が約77%、出力が約70%安い。ただし、これは単価差であり、仕事1件の請求総額の差ではない。
| 課金区分 | Flash オフピーク | Flash ピーク | Pro オフピーク | Pro ピーク |
|---|---|---|---|---|
| 入力:キャッシュヒット | $0.003 | $0.006 | $0.022 | $0.044 |
| 入力:キャッシュミス | $0.15 | $0.30 | $0.66 | $1.32 |
| 出力 | $0.60 | $1.20 | $1.98 | $3.96 |
平日 10:00–13:00 / 15:00–19:00 はピーク
公式の平日01:00–04:00/06:00–10:00 UTCをJSTへ換算。週末はオフピーク。祝日の特例・適用単価は提供元の案内で確認し、日本の祝日だから割引と推定しない。
同じ仕事を夜間へ移せるなら、ピーク比で単価は半分。まず実行時間帯を揃えて比較し、その後に夜間バッチ化の効果を別に見ると、モデル変更と時間割引を切り分けられる。
出典:[3] DeepSeek API:Models & Pricing / [6] DeepSeek公式図:V4.1 Flash API Pricing / [1] DeepSeek:V4.1 Flash 発表(9/10)
FROM TOKEN PRICE TO TASK COST
「キャッシュが課金の本体」を、数字で確かめる
長時間のエージェントは、会話やツール結果を増やしながら何度もAPIを呼ぶ。そのため、1回のコンテキストが1M以内でも、累計の再読トークンは何千万・何億にもなり得る。この累計量と単価を分けて考える。
+ M × ミス単価 + O × 出力単価) / 1,000,000H・M・Oは、その仕事で消費した累計トークン数。複数の料金時間帯をまたぐ場合は、時間帯別に計算して合算する。
例として、オフピークにヒット入力1億、ミス入力100万、出力10万を使ったと仮定する。Flashは$0.510、Proは$3.058。同じ使用量なら約83.3%減となり、Flashでも約58.8%がヒット入力の費用だ。
自分の累計トークン量で、単価差を試す
単位はすべて百万トークン。100=1億、0.1=10万。API通信やデータ送信は行いません。
同じ使用量で 83.3%減 / Flash料金のうちヒット入力 58.8%
単価表を固定した静的試算。税・通貨換算・外部ツール・再試行の追加使用量・人のレビュー工数は別。実際は両モデルのトークン量も異なる。
いつもキャッシュが主役とは限らない。ヒット入力を1,000万に下げると、Flashは$0.240で、そのうちヒット入力は12.5%。新規入力が多い仕事や長い出力では、別の費用が中心になる。
出典:[3] DeepSeek API:Models & Pricing / [8] DeepSeek API:Context Caching
MAKE CACHE HITS OBSERVABLE
勝手に安くなると思わず、usageを記録する
自動キャッシュが再利用するのは、過去の入力と一致する先頭側の並び(接頭辞)。単に同じ文章をどこかに含めれば、すべて安くなるわけではない。過去の「回答そのもの」を返す仕組みでもない。
A+Bの境界まで保存済みなら、次のA+B+Cで前方を再利用できるという例。色は再利用候補/新規入力を表し、100%ヒットを保証しない。
共通ルール・ツール定義・変わらない資料は前方へ、タスク固有の入力は後方へ置く設計が検証候補になる。ただし保存境界、キャッシュ作成までの時間、未使用時の削除などの条件があり、実際のヒット量はレスポンスで確認する。
| 項目 | 何を見るか |
|---|---|
prompt_cache_hit_tokens | 再利用できた入力トークン |
prompt_cache_miss_tokens | 再計算・新規処理となった入力トークン |
completion_tokens | 出力の消費量。画面に見える文字数で代用しない。 |
curl --fail-with-body --max-time 120 \
https://api.deepseek.com/chat/completions \
-H "Content-Type: application/json" \
-H "Authorization: Bearer ${DEEPSEEK_API_KEY:?APIキーを環境変数に設定してください}" \
-d '{
"model": "deepseek-flash",
"messages": [
{"role": "system", "content": "根拠と不明点を分けて回答してください。"},
{"role": "user", "content": "公開サンプルAPIの境界値テスト観点を3つ示してください。"}
],
"thinking": {"type": "enabled"},
"reasoning_effort": "high",
"stream": false
}'
Bashと対応するcurlでの例。この短い1回の呼び出しは長文キャッシュ性能の試験ではない。組織が承認したAPIキーを使用し、ブラウザーのHTMLやログへキーを埋め込まない。
ツール呼び出しを使うときの追加確認
互換APIでも、思考モードでのツール呼び出しに必要な履歴の返却条件を確認する。公式ガイドは特定の継続処理でreasoning_contentの再送を要求している。既存クライアントが必要なフィールドを落としていないか、エラーとusageを含めて検証する。エイリアス名だけでなく、取得可能なモデル識別情報と実行日時も残す。
出典:[8] DeepSeek API:Context Caching / [2] DeepSeek API:提供モデルとPro継続案内 / [9] DeepSeek API:Thinking Mode
OPEN WEIGHTS ≠ SMALL FOOTPRINT
MIT・1M・画像理解。それぞれの意味を取り違えない
MITライセンスの公開重みとAPI提供は、利用方法の選択肢を広げる。ただし、「ライセンスが自由」「APIが安い」「手元で軽く動く」は別の話だ。
まず能力・費用を検証する
自前の推論基盤を構築せずに比較できる。試す情報は公開データや合成データから選び、送信先・契約条件・組織の承認を先に確認する。
基盤まで管理する選択肢
重み、条件付きメモリ、推論実装、KV、配信負荷を含めて構成を見積もる。8B/16Bの有効数だけから、個人PCで動くと判断しない。
1Mコンテキストも、無制限の記憶ではない。長いログのどこにある情報を拾えるか、途中の仕様変更を取り違えないか、不要な履歴を増やしすぎていないか。自分の入力で確かめる。
社内コードや顧客情報を扱う場合は、モデル性能の前に許可する情報と操作範囲を決める。検証用リポジトリ、読み取り中心の権限、外部送信と本番変更の承認点を設ける、というのが本号の運用提案だ。
API利用料金は、MITライセンスだから無料になるわけではない。ライセンスと利用契約、組織の情報管理要件はそれぞれ確認する。本号は法令適合や医療情報の取扱いを判定するものではない。
出典:[4] DeepSeek公式モデルカード:V4.1 Flash / [3] DeepSeek API:Models & Pricing / [2] DeepSeek API:提供モデルとPro継続案内
THE NEXT EXPERIMENT
次の1本は、合格1件当たりの総費用で比べる
「キャッシュヒット後の請求だけを見る」は、価格の構造を知る小さな実験として有効だ。ただし、採用判断は同じ仕事を、同じ品質まで仕上げた総費用で行う。単価が安くても、やり直しやレビュー負担が増える可能性は残る。
- まず、比較するモデルが本当に別か確認Proの継続案内と呼び出し先を確認。旧Flashの互換名は新Flashへ転送されるため、名前だけ違う同一モデル比較を避ける。
- 同じ出発点・同じ合格条件を用意同じコミットを分けて使い、修正対象・禁止事項・自動テストを固定。実行枠組み、ツール、権限、推論設定を揃える。
- 「単価の差」と「行動の差」を分ける固定トークン量の料金試算で単価差を確認したあと、実タスクでトークン量、リトライ、時間、品質の差を測る。
- 1本の手応えを、複数タスクで確かめる1回の比較は予備試験にとどめる。失敗も含むAPI費用・外部ツール費用・人の工数を集計し、合格1件当たりで判断する。
公開データだけを使い、同じリポジトリの同じコミットから、 V4 ProとV4.1 Flashを比較する検証計画を作成してください。 【対象】 公開サンプルAPIの入力検証を改善し、回帰テストを追加する。 変更する範囲と、完了の受け入れ条件を実行前に明記する。 【条件】 ・各モデルは独立した作業ディレクトリから開始する。 ・同じハーネス、ツール、権限、資料、推論設定、停止条件を使う。 ・最初に実際のmodel名と提供先を確認し、同じモデル同士の比較を避ける。 ・同じ料金時間帯で比較する。時間帯をまたいだ料金は分ける。 ・1本は予備試験。採用判断は複数の代表タスクと反復で行う。 【各API呼び出しで保存する値】 実行時刻、model、ヒット入力、ミス入力、出力、応答時間、 ツール回数、リトライ、エラー、停止理由。 【報告】 1. 受け入れ条件と自動テストの合否 2. キャッシュ料金/ミス入力料金/出力料金とAPI総額 3. 完了までの時間、人による修正・レビュー時間 4. 失敗試行も含む総コスト ÷ 合格したタスク数 5. 実測と推測を区別し、未測定値を埋めない 本番環境の変更、外部への公開・送信、秘密情報の使用は行わない。 判断が必要な操作の前に停止して承認を求めてください。
安い「1トークン」より、
安く完了できる「1件」を選ぶ。
V4.1 Flashの価値は、長い履歴を伴う仕事のコストを下げる可能性にある。Proの強制切替を急ぐ話ではなく、自分のタスクで選び直す話だ。
出典:[2] DeepSeek API:提供モデルとPro継続案内 / [3] DeepSeek API:Models & Pricing / [8] DeepSeek API:Context Caching