2026-04-25 · Sat
Issue № 04/25 The Daily AI Intelligence Brief
PLATFORM · デジタル庁 OSS

源内 / GenAI

生成AI 利活用基盤 (源内Web × 行政実務用AIアプリ) · 2026-04-24 公開

バラバラなAI利用を、
安全に管理し、
業務に広げる基盤へ。

デジタル庁が開発・運用する生成AI 利活用基盤
一部が商用利用可能なライセンスのもと、無償の OSS として公開された。

源内 (GenAI) は、利用者が直接触る 源内Web と、業務向けの 行政実務用AIアプリ という2 種類のシステムで構成される。源内Web には、チーム管理 / AIアプリ管理 / 外部マイクロサービスとして構築した生成AIアプリの追加・実行機能が組み込まれている。デジタル庁デザインシステムの適用、アクセシビリティ試験、監視・モニタリング等の運用機能も整備されている点が、汎用 OSS との違いだ。

源内 (GenAI) — デジタル庁の生成AI 利活用基盤 OSS のカバー画像
FIG 01 · 源内 = 利用者向けの源内Web と、業務向けの AI アプリ群(マイクロサービス)の組み合わせ
まず結論 — 源内は何を変えるのか
  1. 源内とは:デジタル庁が開発・運用する生成AI 利活用基盤の OSS
  2. 仕組み:源内Web と業務別 AI アプリを分離し、チーム管理・AI アプリ管理・外部 AI アプリ連携を備える。
  3. 企業にとって:社内の AI 利用を安全に管理し、業務別 AI アプリを広げるための検証基盤になり得る。
2
源内Web × 業務別AIアプリ
SSO
チーム管理 + 監査 + 運用
REST
外部AIアプリを追加・実行
A11y
アクセシビリティ試験を実施
MIT
SW: MIT / Doc: CC BY 4.0

事実 2026年度全府省庁の約 18 万人の政府職員を対象とした大規模実証を実施予定(デジタル庁公式発表)。これは政府の実証スケールであり、企業導入の実績値ではない点に注意。

§ 01課題 · なぜ AI 活用は社内で広がりにくいか

情シス・管理部門が抱える「3 つのジレンマ」

生成 AI への需要はあるが、現場任せにも自前構築にも踏み切りにくい——「禁止」「許可」「自社開発」のどれを選んでも別のリスクが残るというトレードオフが、多くの組織で観測されている。

事実 公式に確認できる情報のみ 解釈 技術的に妥当な推論 期待効果 業務文脈での想定価値
Before · 多くの組織で観測される状況

3 つのジレンマ

  • 禁止しても個人判断で管理されていない AI 利用が広がりやすい
  • 許可しても汎用 SaaS は社内文脈に弱く、用途を絞りづらい
  • 自社開発は毎回ゼロから作る形になりやすく、長期・高コストになりやすい
  • 結果として、各社が共通化されていない開発を重複しがち
  • 解釈 「全社共通の AI 利用基盤」が標準化されていれば、各社の重複投資は減らせる可能性がある
After · 源内を「土台」として使う場合

共通土台で何が変わるか

  • 事実 源内Web に SSO・監査ログ・チーム管理・AI アプリ管理を内蔵
  • 事実 業務別 AI アプリを REST 連携で追加・差し替え可能
  • 解釈 自社AIポータルの実装コストを下げる選択肢になりうる
  • 期待効果 管理されていない AI 利用を抑制しやすくなる運用設計が組める
  • 期待効果 業務別 AI アプリを差し替え・拡張しやすい構成にできる
§ 02仕組み · 2 種類のシステムで何ができるか

源内Web は「利用者の窓口」、業務別 AI アプリは「中身」

源内は 源内Web(Web アプリケーション)行政実務用 AI アプリ(マイクロサービス)の 2 種類で構成される。窓口側は組織共通の機能、中身側は業務単位で増やしたり差し替えたりする想定だ。

源内Web (genai-web) のポータル機能イメージ
源内Web — 利用者の入口。チーム管理 / AI アプリ管理 / 外部 AI アプリの追加・実行 / 監視・モニタリング
PART 01

源内Web — 利用者向けの Web アプリ

事実 チーム管理、AI アプリ管理、外部マイクロサービスとして構築した生成 AI アプリの追加・実行機能を備える。事実 デジタル庁デザインシステム適用 + アクセシビリティ試験 + 運用監視を整備。

PART 02

行政実務用 AI アプリ — 業務別マイクロサービス

事実 生成 AI を活用したマイクロサービス群。事実 源内Web から外部 REST API として呼び出せる構成。

CONNECT

JSON 定義 × REST API 連携

事実 AI アプリ登録時にリクエスト形式を JSON で定義する。解釈 プロトコルと JSON 定義に準拠していれば外部の業務 AI アプリも追加しやすい構成と読める。

RUN

運用 — 監視・モニタリング

事実 監視・モニタリング等の運用機能追加が説明されている。解釈 商用導入を想定した運用設計の足場が用意されていると読める。

期待効果 業務シナリオの一例:契約・規程レビュー補助、議事録作成、社内 FAQ など、用途別の AI アプリを並べる構成が考えられる。具体的な工数削減効果は対象業務・運用設計・評価基準に依存するため、PoC で検証することが前提となる。

業務別AIアプリを源内Webに追加するイメージ
業務別 AI アプリ層 — REST API 連携で追加・差し替えしやすい
§ 03構成 · アーキテクチャ図

利用者 → 源内Web → 業務別 AI アプリ → クラウド/AIモデル/データ

3 階層で考えると分かりやすい。利用者の窓口は源内Web に統一され、その奥で業務別の AI アプリがそれぞれのクラウド・AI モデル・自社データに接続される。

Tier 1 · User
利用者(社員 / 自治体職員)
Tier 2 · Portal
源内Web(Web アプリケーション)
  • チーム管理(組織 / 部署)
  • AI アプリ管理(公開 / 権限)
  • 外部 AI アプリの追加・実行
  • 監視・モニタリング
Tier 3 · 業務別AIアプリ
行政実務用 AI アプリ
  • 業務単位のマイクロサービス
  • JSON でリクエスト形式を定義
  • 源内Web に動的に追加可能
Tier 3 · 外部AIアプリ
外部 AI アプリ(自社開発 / 連携)
  • 同じ REST API 仕様で接続
  • 差し替え・拡張しやすい
  • 自社業務向けの AI アプリも追加可
Backend
Azure 系 AI アプリ
  • Azure OpenAI 等
Backend
Google Cloud 系 AI アプリ
  • Vertex AI / Gemini 等
Backend
AWS 系 AI アプリ
  • Bedrock / 自社モデル等

解釈 構造上、窓口(Web)と中身(業務別 AI アプリ)を分離しているため、AI アプリ単位で AI モデル・クラウド・データ連携の選択ができる。「特定のクラウドや AI モデルへの依存を下げやすい」構成、と表現するのが正確。

§ 04事実と解釈の分離

何が公式事実で、どこからが企業側の期待か

情報を読み解くときに混ざりがちな 3 種類の言明(公式に確認できる事実 / 技術的に妥当な解釈 / ビジネス上の期待効果)を、はっきり分けて並べる。意思決定にあたっては「事実」だけが土台で、それ以外は仮説として扱う。

Verified · 公式
公式に確認できる事実
  • デジタル庁が開発・運用する生成 AI 利活用基盤
  • 源内Web と行政実務用 AI アプリで構成される
  • 源内Web にチーム管理 / AI アプリ管理 / 外部 AI アプリの追加・実行機能
  • Software は MIT License、Documentation は CC BY 4.0
  • 2026 年度に全府省庁約 18 万人を対象とした大規模実証を実施予定
Inferred · 技術解釈
技術的に妥当な解釈
  • Web 画面と業務別 AI アプリを分けることで、AI アプリを追加・差し替えしやすい
  • チーム管理や AI アプリ管理により、社内 AI 利用の統制を設計しやすい
  • 外部 REST API 連携により、自社業務向け AI アプリを接続する入口になり得る
Hoped · 期待
ビジネス上の期待効果
  • バラバラな AI 利用の抑制
  • AI 利用基盤の共通化
  • 業務別 AI アプリの内製検証
  • 特定ベンダーや特定クラウドへの依存低減

期待効果は「実現する」ではなく「期待できる」「可能性がある」「設計しやすい」という形で扱う。導入判断は、自社の検証結果と運用設計に基づくべき

§ 05価値 · 誰にとって、何が嬉しいのか

同じ「源内」でも、立場ごとに見える価値が違う

経営 / 情シス・CISO / 開発 / 現場の 4 つのレイヤーそれぞれの視点で、源内が何の選択肢になり得るかを整理する。期待効果 の表現に留め、実績や保証ではない。

Executives
経営層 — 投資の方向付け
  • AI 投資の重複削減を検討しやすい
  • 全社の AI 利用を標準化する選択肢になる
  • 特定サービスへの依存低減を図りやすい
IT / CISO
情シス / CISO — 統制と監査
  • チーム管理・AI アプリ管理で公開範囲を制御
  • 利用状況の可視化と監査しやすい運用
  • 管理されていない AI 利用を抑制しやすい運用設計
Engineering
開発チーム — 拡張と進化
  • Web 画面と業務別 AI アプリを分離して開発
  • 外部 REST API 連携で機能追加
  • JSON 定義に基づく接続設計
Business Users
現場部門 — 安全な利用
  • 共通ポータル経由で AI を利用
  • 業務別の専用 AI アプリを選んで使える
  • 個人の汎用ツール利用に頼らずに済む
§ 06確認 · 導入前に確認すべきこと

源内は「土台」。運用・設計・コストは各社側にも残る

「OSS で公開されている」ことと「すぐに使える」ことは別だ。源内をベースに据える場合に、社内検討の前段で確認しておくとよい項目を 6 つに整理する。

01
IdP / SAML 連携

SSO・SAML 設定は自社の認証基盤に合わせた個別作業が必要。「設定するだけ」ではない。

02
権限・チーム・監査ログの運用設計

権限設計、チーム設計、監査ログの保持・出力先を、自社のセキュリティ方針に合わせて決める必要がある。

03
運用コスト

API 利用料、クラウド費用、ホスティング・運用監視費用は別途発生する。ライセンス料の有無と総コストは別の話。

04
OSS 利用者側の責任

共通実装を参照しつつ、脆弱性対応・アップデート追随・運用責任は利用者側にも残る。SBOM やパッチ運用設計が前提。

05
AI アプリ品質の担保

AI 出力の正確性は別問題。評価設計と人間のレビュー設計(精度 / 回答根拠 / 例外フロー / 利用ガイドライン)を業務単位で組む必要がある。

06
自社データ連携 / RAG のデータ品質

自社データを使う場合、データの権限・整備状況・更新頻度・品質管理の設計が必要。データ品質を整えないまま接続しても効果は得にくい。

§ 07次にやること · 検証の最初の 4 ステップ

情報収集から、検証の段階へ

「源内すごい」で止めず、自社で評価するために置きにいくべき4 つの作業に落とし込む。OSS であるからこそ、検証は短いサイクルで回せる。

NEXT 4 STEPS · 検証アクションリスト

  1. 源内Web を検証環境に立てる 公式リポジトリの手順で、社内検証用に最小構成を起動する。本番接続はまだ行わない。
  2. チーム管理・AI アプリ管理・外部 AI アプリ連携の適合性を確認する 自社 IdP との SSO 連携、チーム設計、AI アプリ単位の公開範囲、外部 REST API 連携の使い勝手を要件と突き合わせる。
  3. AI アプリ化しやすい業務を 3 つ選ぶ 入出力が定義しやすい定型業務(規程レビュー補助、議事録要約、社内 FAQ 検索 など)を候補に。
  4. 自社データ連携、RAG 評価、運用監査の設計に進む 対象データの権限・整備状況、評価データセット、レビュー人員、利用ガイドラインまでを並走で設計。