学習から外しただけでは足りない
人や動物に感染するウイルスは、学習データから外した。モデル自体は公開されているので、それだけで安全、とは言えない、という指摘がある。
Evo · DNAを書くAI
タンパク質をひとつ作った話ではない。Science 8月6日。Stanford と Arc Institute の研究だ。 AIの Evo が、細菌を殺すウイルス(ファージ)の設計図を最初から最後まで書き、約285個のうち16種が自分で増え、大腸菌を溶かした。 大事なのは、ファージを作ったことではなく、自然界にない設計図が実験で動いたことだ。
要約
Stanford 大学と Arc Institute の Brian Hie 研究室。論文の第一著者は Samuel H. King。2026年8月6日の Science。論文は、AIがファージ(細菌に感染するウイルス)の全ゲノムを書いて動かした、初めての例だと書いている。
Evo 1 / Evo 2 は、DNAの文章を学ぶAIだ。小さなファージ ΦX174 を型にして、遺伝子11個ぶんの設計図を一度に書いた。遺伝子が重なる部分も、オンオフの配列も含む。Hie は「端から端まで一度に書いた。あとから足したものはない」と述べている。これまでのAIは、タンパク質ひとつや短い配列が主だった(AlphaFold や RFdiffusion)。
ここまで通っていた考えは、こうだ。AIはタンパク質は設計できても、自分で増える全ゲノムは書けない。生命の設計図は自然から取る。
設計図は自然から借りる。タンパク質をひとつずつ
全ゲノムを書いて、実験で動く
ファージを作ったことが主題ではない。自然界にない設計図が動いたことが主題だ。
何が変わったか
ΦX174 は、細菌に感染するごく小さなウイルスだ。1977年、Sanger がDNAとして初めて読み切ったのがこれだった。2003年、Venter らが化学的に作った最初のゲノムのひとつでもある。2026年、AIが自然界にない、しかも動くものを書いた。読める、コピーできる、の次に、新しく書ける、になった。
どこで壊れる
Johns Hopkins の健康安全保障センターの Thomas Inglesby と Moritz Hanke が、同じ号の解説で書いた。「生成AIでウイルスの設計図を組み立てる力は、もうある。それを安全に使う決まりはない」。
いま、誰でも人にうつるウイルスを書ける段階ではない。約5400塩基、成功率約5.6%。Imperial College の Tom Ellis は「いちばん小さく、いちばん易しいゲノムだ」と述べている。それでも解説は、動くウイルスの設計図をAIが書けることを示した、と見る。
人や動物に感染するウイルスは、学習データから外した。モデル自体は公開されているので、それだけで安全、とは言えない、という指摘がある。
King's College の Filippa Lentzos は、DNAを作る会社の段階がいま最も重要だと述べる。検査は「知られている危険な配列に似ているか」が主で、新しい組み合わせは見つかりにくい、という指摘がある。
Inglesby らは、人・動物・植物に感染する病原体の設計図をAIで書く研究は追うべきでない、と書く。いまある薬や対策では止められない病原体になりうる、とも書く。
論文は、全ゲノムを設計するあいだ安全の専門家に相談せよ、と書く。実験室から出さないことも問題にしている。DNA合成を法律で検査する義務は、まだ整っていないと報じられている。
いま言えること: すぐに世界的な流行が起きる、という話ではない。学習データから外すことと、合成時の検査の両方に、すでに穴がある、と専門家が見ている。配列も作り方も、ここには書かない。
今日
このページでやることは、Science の論文を読むことだけだ。自分でファージを作らない。ゲノムの配列も、作り方も、ここには書かない。
まとめ
Evoは、自然界にないファージの全ゲノムを書いて動かした。安全に使う決まりは、まだない。
今日やることは論文を読むことだけだ。配列と作り方は、ここには書かない。
Day Slide No.382 · 2026-08-17 · AI Intelligence Hub